地盤負担が少なく断熱性も高い。「耐火木造」のメリットを再確認。

キッチンを中心にした広いLDKで家族集合。
息子さん2人はそろって空手を習っている。
南ベランダから、日光が差し込み、冬だと言うのに、ただいま無暖房。

都内でも年に数例という「耐火木造」による家づくりを紹介したい。
初めは鉄骨造でという施主の希望だった。
しかし、足立区という土地柄、地盤が非常に軟弱で、鉄骨造に堪えうるように地盤強化を施すと、予算を大きくオーバーしてしまう。地盤の負担を減らすためには木造だが、ここは住宅密集地で「防火地域」に指定されている。結局「耐火木造」が選ばれた。
通常は単板張りの石膏ボードを、「耐火」では2枚張りにし、外壁には鉄骨造などで使うALC(軽量気泡コンクリート)ボードを張り、さらにその上からサイディングボードを張って、と手間がかかる。当然壁は厚くなり、窓ひとつ取り付けるのにも「おさまり」がよくないので、また手間がかかる。だから、普通の工務店ではやりたがらないし、やらないからノウハウもない。それでも、施主Sさんと工房は、あえて耐火木造で計画を進めた。
工期も当然長くなったが、結果、想像以上に頑丈な木造ができあがった。実は、同じ土地にあった以前の家がハウスメーカーのRCで、しかし築30年以上経っていたこともあり、近くの幹線道路を大型トラックが走るたびに振動していた。その振動を、この木造ではほとんど感じることがないのだという。

耐火木造2階建て。カッチリとした造りが外観からもうかがえる。外壁は厚く、断熱効果は高い。

徹底したシンプルな間取りで、広々とした空間と日当たりを実現。

土地柄、建ぺい率は高くない。それでも、広いリビング、広いキッチン、広いベランダ、というS夫妻の要望は、徹底したシンプルな間取りで実現した。
小学4年生と幼稚園の年長サンというワンパク盛りの2人の息子さんが、広々とした無垢フローリングの上を駆け回る。
もうひとつの要望「日当たり」も、南側にある3階建ての影響をうまく避けて実現した。耐火木造の厚い外壁が断熱効果となって、訪問した12月中旬にも「まだ一度も床暖を使ってないですよ」とのことだった。
実はSさんは、給排水工事の会社を経営される建築業界のプロ。この家の施工では、工房の元請の下で施主自らが給排水工事を請け負うという珍しいカタチとなった。
そんなSさんが自宅の設計施工を工房に依頼する決め手となったのが「営業担当者」だったという。
「同業ですから、いろいろ営業マンを見ています。この家のことでは約1年半、計画変更も含めああでもないこうでもないとやりとりを重ねましたが、その間、どんな局面になってもずっと彼は変わらなかった。信頼できました」と、Sさん。
工房側も、施主が職人さんで、一緒に仕事をするという緊張感がよい刺激になったのだった。
フローリングのオーク無垢の幅広材は、さまざまな無垢材が選べるかつて工房が取り扱っていた無垢材ショップで購入。
玄関を入ると右は主寝室、左はお母様の部屋。奥にバスルームとトイレ。階段を上がると、広いLDKとなる。
洗面からバスルームへ。ここも余裕の広さで使いやすそう。
フローリングのオーク無垢の幅広材は、かつて工房が取り扱っていた無垢材ショップで選定。


【スペック】
東京都足立区 S様邸
2013年6月竣工/耐火木造/2階建て/専用住宅
敷地面積=201.96m2(61.09坪)
建築面積=59.62m2(18.03坪)
床面積=1階59.62m2(18.03坪)/2階59.62m2(18.03坪)
延床面積=119.24m2(36.06坪)
設計施工=株式会社工房