鉄筋コンクリート(RC)造の外断熱工法とは?

私たちの本社屋「工房ビルディング」もRC外断熱工法を採用しています。3種類の外断熱材を組み合わせています。

「鉄筋コンクリート(RC)造外断熱工法」は、オイル・ショック以降、建物の省エネルギー化が進み、欧米の住宅先進国では「断熱といえば外断熱」というほど一般的な断熱工法として普及しました。
私たちは、この「RC外断熱工法」に早くから注目し、海外視察や技術的な修練を重ね、東京近郊で数多くの「RC外断熱工法」の住宅を手掛けてきました。
日本では、現在でも「内断熱」が主流ではありますが、『日本建築学会 建築工事標準仕様書 JASS24』でも、温熱環境と構造躯体の耐久面から、「RC外断熱工法」を<有力な工法>として紹介しています。
住宅には様々な工法が存在しますが、ここではRC造の外断熱工法について解説いたします。

鉄筋コンクリート造は堅牢なのか

防災対策を施した二子玉川のRC外断熱住宅

鉄筋コンクリート造を構成している「コンクリート」は圧縮強度に比べ、引っ張られる力に弱いという欠点があります。そこでコンクリートに引っ張りに強い「鉄筋」を組み合わせ、強度を引き上げた構造体、これが「鉄筋コンクリート(RC)造」です。

木造でも鉄骨造でも、建物の荷重を支えている基礎部分が鉄筋コンクリート構造であることからも、その堅牢さが窺えます。築50年前後の木造の基礎などは、基礎に鉄筋のない「無筋コンクリート」であることが多く、現在の日本建築防災協会の指針では、そうした住宅の耐震性は脆弱であると指摘されています。
鉄筋コンクリート造は堅牢である、これが一番の構造的な特徴です。

完璧でない堅牢さ、「中性化現象」

採光とプライバシーを確保した設計のRC外断熱工法住宅

「うちは鉄筋コンクリートで建てたから大丈夫」
本当にそうでしょうか?家も車も人間も、メンテナンスを怠れば、どんなに優れたものも丈夫であり続けることはできせん。鉄筋コンクリート造がいくら堅牢であるからといって、放置すれば劣化します。
「コンクリート」はアルカリ性、内部の「鉄筋」は酸に弱い材料でできています。
鉄筋コンクリート造というのは、酸に弱い鉄筋を、アルカリ性のコンクリートで覆い、強度が落ちない構造になっています。コンクリート自体、アルカリの性質が、酸性雨や直射日光など厳しい外部環境にさらされますと、徐々に本来の品質が低下していきます。コンクリート強度が弱まってきますと、コンクリート躯体にクラックや亀裂が発生し、中の鉄筋が錆びやすくなります。
鉄筋コンクリート造で避けなければならない「中性化現象」の問題です。

「中性化現象」が進行しますと、弱くなったコンクリートにヒビが入りやすくなります。
構造の内部に雨水が浸透すれば中の鉄筋も錆びてきます。錆びた鉄筋は膨張してコンクリート内部から表面を押し上げ、表面に亀の甲羅のような新たなひび割れを誘発する被害に発展します(爆裂現象)。この段階になると、本来備わっていたコンクリートと鉄筋の圧着力も弱まり、見た目は同じようでも、実際には本来の強度を保っていない状態になってしまいます。

酸に弱い鉄筋がコンクリートのアルカリの性質で保護されてます。

コンクリートが弱まってくると、クラックを誘発しやすくなります。 外気や雨の影響を受け錆びはじめた鉄筋が膨張し、内側からコンクリートを押し上げて状況をさらに悪化させます。

 

「中性化現象」を予防する外断熱工法

赤い外階段と走り回れるリビングのRC外断熱工法の家

コンクリートの中性化を予防する方法に「外断熱工法」があります。
コンクリートを外壁の側から覆う断熱材によって、コンクリート面が保護され、構造体の劣化を大幅に遅らせることができます。また、コンクリートの表面から鉄筋までの距離を「かぶり厚」といい、この「かぶり厚」が大きいほど、コンクリート内部の鉄筋が酸化するのを遅らせることができます。「品質確保促進法」では、「外断熱工法ならコンクリートのかぶり厚を外壁面より10mm減じても良い」と定めています。
これは、「外断熱工法」が、コンクリートの劣化対策として有効であると国が認めているからです。

断熱材は完璧ではない

内断熱であっても外断熱であっても、熱の流入を100%シャットアウトできるわけではありません。

断熱材は、熱を「伝えにくくする」材料であり、熱を「完全に遮断できる」材料ではありません。省エネルギー基準では、日本をいくつかの気候区分に分類し、エリアごとに適切な断熱材の厚みの指針を設けています。
それに加えて、構造体が受ける熱の影響にも設計段階から配慮が必要となります。こうした観点から、外気の影響がより少なくなる「外断熱工法」の省エネ性が徐々に注目されはじめてます。

内断熱と外断熱 それぞれの長所と短所

下記は、日本建築学会発行の『建築工事標準仕様書・同解説 JASS24断熱工事』に記載されている比較表です。

このように、いろんな視点から外断熱と内断熱の○×を比較していけば、外断熱も決して万能でないことがわかります。
まだ日本での普及率が高いとはいえない外断熱材は、流通面からも施工の手間からも、内断熱より建築コストが増額となる難点があります。

 

 

 

ヒートブリッジでわかる「内断熱」と「外断熱」の性能差

高気密高断熱のドライビット外断熱工法住宅

ヒートブリッジとは、「伝わって欲しくない熱が伝わる、望ましくない熱の伝導ルート」を言います。ヒートブリッジによって、夏は室内側に暑さを伝え、冬は室内側に寒さを伝えてしまいます。これが過剰に起こりますと、家は外気の影響を受けやすくなり、室内温度も安定しにくくなります。

財団法人建築環境・省エネルギー機構発行の『住宅の省エネルギー基準の解説』の「熱還流率の計算における熱橋の取扱いの違い」では、鉄筋コンクリート造の「内断熱」と「外断熱」ではヒートブリッジ量が異なり、断熱補強対策をしても暖冷房負荷には差が出てくると解説をしています。

「内断熱」では、最下階の床スラブと間仕切のRC壁、中間階の床スラブと外壁面、RC間仕切壁と外壁・屋根スラブの取合い部分すべてがヒートビリッジとなるのに対し、「外断熱」ではバルコニーやパラペット部分のみでヒートブリッジを最小限に抑えられるので「内断熱」よりも優れていると解説をしています。
では、実際に図で見てみましょう。

■内断熱
これは、現在最も広く普及している一般的な鉄筋コンクリートの断熱工法です。コンクリート躯体の内側に発砲ウレタンなどを吹付ける断熱の手法をとっています。

「ブルー」が構造体、「イエロー」が断熱材。左の青い矢印が「ヒートブリッジ」。冬場の冷えや夏場の灼熱の影響を受けたコンクリート躯体の熱は、部屋内へ伝わりやすくなります。熱の伝達ルートを抑制する断熱補強が必要になります。

 

 

■外断熱

コンクリートの外側に断熱材を張る外断熱工法では、コンクリート躯体が外気の影響を受けにくくなります。屋内の温度はより安定し、家の中の温度ムラも抑えられます。また、コンクリート躯体の劣化も抑止できます。

 

 

 

北海道外断熱建築協議会の『住まいの断熱読本 夏・冬の穏やかな生活づくり』の「内断熱の温度分布と熱流」より

鉄筋コンクリートの構造躯体が冷え、屋内にまで達しているところ

 

縦の部分は鉄筋コンクリートの外周壁、
横の部分は構造の床、左側が外気となります。

 

 

 

 

 

コンクリートの内側に吹き付けた断熱材でかろうじて防いでいます。
「内断熱」では、コンクリート躯体は、外気温とほぼ同じ温度に下がり、冷えきったコンクリートの冷熱が、躯体を伝ってじわじわと部屋内へ影響していきます。

次に、『北海道外断熱建築協議会発行外断熱工法ハンドブック-2003年版-』の中の「断熱方法と室内側コンクリートの表面温度」の図を見てみましょう。
左が「内断熱」、右が「外断熱」です。細かな斜線部分が「断熱材」です。
(細い3本斜線はコンクリートを表す図面記号)

外気温が-10度の時、「内断熱」では、2階構造床の温度は14.6度。「外断熱」は、同じ場所で約5度高く、19.5度に留まります。さらに、人間の体感温度で考えますと、構造床からのひんやりとした冷輻射によって、「内断熱」の方が足元や壁際でより寒く感じます。
また、構造体付近で起きる「壁体内結露」の可能性も「内断熱」の方が多く、結露で誘発されるカビやダニによる「シックハウス」を引き起こす可能性も潜みます。

燃費の悪い家は、設備に頼りきる

住宅には、どうして「冷暖房設備」が必要なのでしょうか?
それは、足りなくなった熱を機械装置が補充しているからです。
断熱の性能が不足していると、屋内で維持確保したい熱を長く保てず、年間を通じて室内温度は外気温に左右されやすい住宅となります。エアコンや床暖房などの設備は、こうした状況を改善させるために設置しているにすぎません。

熱が大量に逃げたり侵入したりする住宅ほど、機械の力に大きく頼ることになります。機械に頼らないと快適に暮らせないレベルの家は、毎月の光熱費もかさみます。仮に、光熱費が月5千円多くかかれば、30年で180万円も余分なコストが発生します。
30坪の家に例えれば、その半分のコストを上積みして新築当初から、高い住宅性能にして機械に頼りすぎず快適に暮らす方が賢明ではないでしょうか?

 

熱の伝播を理解して設備を選択する

家に補填する熱ですが、その「伝わり方」には主に3つの種類があります。
高性能な家づくりでは、できればこの3つの熱の意味は理解しましょう。
3つの熱とは、「伝道」、「対流」、「輻射」を言います。

「伝導」とは「物の中を熱が伝わっていく現象」をいい、高温から低温へ移動していきます。昔なつかしい「湯たんぽ」はお湯から容器に熱が伝わり、それに接している布団や人に熱が直に伝わっていきます。

「対流」とは「暖められた空気が上昇することで熱を伝える現象」をいいます。これは「エアコン」のように、ある熱を帯びた空気が動くことで伝播していく熱のことだとお考えください。

「輻射」とは「電磁波のかたちで熱エネルギーを放出する現象」を言います。わかりやすく例えますと、風はなくても太陽のポカポカした暖かさ、「陽だまり」に該当します。

このように、熱の伝わり方にはそれぞれ特色があり、住宅における熱の補充は、工法や間取り、住まい方の用途によって適切な設備選定が重要になってきます。

「蓄熱性」の鍵となる熱容量について

個性的な外観の家 ドライビット外断熱工法住宅

熱容量とは、物体の温度を1度上げるのに必要な熱量のことを言います。鉄筋コンクリート造で使用されるコンクリートの熱容量というのは、木造の「木材」や鉄骨造の「ALC」等と比較しても、数字に大きな違いがあることが分かります。

「コンクリート」は「空気」や「木材」、「ALC」に比べ、あたたまりにくいのが数値的にわかります。その反面、コンクリートには、膨大な熱量を吸収できる分、蓄熱性があります。外断熱では、この「蓄熱性」を逆に屋内側の温熱環境づくりに利用して、安定温度を確保する発想に基づいて屋内の快適な温熱環境づくりを目指した断熱手法です。

暖かく涼しい快適さと蓄熱・輻射による心地良さ

コンクリートの蓄熱性の高さを活かすのが外断熱の特徴です。「蓄熱」とは、文字通り「熱を蓄えること」。建物の蓄熱性というのは、その建物の温まりにくさ、冷えにくさを表す性質で、建物の使用材料(木、鉄、コンクリート等)の「熱容量」に比例します。

外断熱によって外気から守られたコンクリートは、室内の温度をゆっくりと吸収していき、ゆっくりと放出していきます。この放出する働きを「輻射(ふくしゃ)」と言います。身近な例では、「遠赤外線」もこの「輻射(ふくしゃ)」に当てはまります。

蓄熱性の高い家では、冷暖房を切っても、急激な温度変化はおきません。床・壁・天井が徐々に蓄えた膨大な熱量が、ゆっくり輻射されていき、ほのかな暖かさや涼しさの感じられる快適な空間を保ちます。

「快感」と「快適」との違い

コンクリート躯体に蓄熱(蓄冷)された熱は、「輻射」によって人体にやわらかく伝わります。エアコンのように、強い風の「対流」による急激な温度調節をしますと、一時的な「快感」が得られます。
でも、長時間浴びていれば、冬は顔がほてり、夏は汗が冷えて徐々に「不快」に転じます。つまり、「快感」とは、短時間の人間の反応であり、いずれは「不快」に転じます。それに対し、適切な温度を保った構造躯体から放出される「輻射」の効果は「快適」さを生じさせ、持続した気持ちよさを実現します。

人が壁際に立った時、空気の温度と壁自体がもっている温度の中間の温度を「体感温度」として感じ取ります。例えば、夏場のトンネルはひんやりとして気持ちいい。トンネルの壁が空気の温度よりも低く、コンクリートがひんやりとした冷熱を放っているためです。
これと同様の仕組みを家の中でつくり出す手法がRC外断熱工法の最大の特徴で、他工法では実現できない独自の「快適さ」と言えます。

RC外断熱工法住宅の施工事例

当社が施工させていただいた「RC外断熱工法住宅」の施工事例は下記リンクよりご覧いただけます。
RC外断熱工法住宅施工事例

 

RC外断熱工法住宅の施工エリア

RC外断熱工法住宅の施工地域は当社の本社がある埼玉県川口市を中心に首都圏エリアでのご相談に応じております。
ご家族構成、土地の広さ・形状、地域の法令などに応じプランニング、ご提案をさせていただきます。
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