問題を抱えながらも紆余曲折、願いをカタチにした家

白亜の外壁が美しい。4階にオーナー。1~3階に単身者用の賃貸が13室。
1階に一部屋だけ、奥様の趣味の部屋を確保した。

もともと両親の代からこの土地に賃貸住宅を2棟所有し、その1棟の一部を住宅としてきた。ここで育ち、ずっと生活してきたYさん、大手航空会社のパイロットを長年勤め上げ定年退職を迎えたのを機に、古くなった2棟(築30年の鉄骨造と築45年の木造)を取り壊し、新たに住宅兼賃貸住宅を建てることにした。しかし、ことはそう簡単に進んだわけではない。Yさんご夫妻が工房のモデルハウスを初めて訪ねたのが、2008年1月。そこから竣工までの約6年半、Yさんと工房との苦楽を共にした長い月日があった。

なんといっても問題になったのが、これまで建っていた賃貸住宅の入居者のことだった。一人だけ、どうしても退去に応じてくれない入居者がいたのだ。賃貸住宅にはよくある話とはいえ、この場合はかなり難しいケースだった。結局めでたく解決はしたものの、それまでには長い時間が費やされた。そして当然のことながら、解決への道を模索しながら交渉を重ねてきた長い時間は、ご夫妻にとってたいへんな精神的負担となったのであった。しかし、だからといって、Yさんご夫妻の新築に懸ける情熱が弱まった、というわけではなかった。


リビングにて、Yさんご夫婦。「6年もおつきあいして、工房さんとはもう半分親戚みたいになりました」と奥様。

奥様がこだわった和室。ご主人の両親から引き継いだ家、ということを忘れないためにも。

「自分の思いの通った家」に向かって、プランは何度も練り直された。

工房から最初に出されたプランについて、実はYさんご夫妻はピンとこなかった。とくに奥様は「あたりまえすぎる」という感想だった。これまで、ご主人の両親と一緒に賃貸住宅の管理運営を担ってきた。その両親の介護もした。そして近年、その両親を見送った。長く悩ましかった入居者退去のごたごたと並行して、身内や友人の不幸なども続き、そのすべてに立ち会ってきた。そんななかで、ついつい気持ちが塞いでしまう自分がいた。だからこそ、今度の家は「自分の思いの通った家にしたい」と、奥様は強く考えた。心の底から「広々と住みたい」と思った。

その思いはいつしか工房のスタッフにも伝わり、プランが何度も練り直された。最終的に設計士が提示した「切妻天井」の開放感を見て、奥様の気持ちは一気に晴れた。そしていま「最終的にはしっくり行きました。苦しみながら、すべてがいい方向に向かったと思っています。いまやっと、この場に立てたという満足感があります。いろいろあったけれど、思えば叶うんだなと思っています」と奥様はしみじみ振り返る。竣工から7ヵ月、引越しの荷物も片づき、「いまはモノを極力少なく、と肝に銘じてるんです」と。


玄関からLDKへと続く長い廊下。「廊下が長いので、暗いと怖いから」という奥様のリクエストで、白亜の廊下が誕生した。


シンクと冷蔵庫と廊下のドアの色が、偶然すべてそろった。奥様のお気に入り。


切妻天井が空間に開放感をもたらした。ご主人のこだわり「全館空調」の吹き出し口が見える。


キッチン奥のパントリーは、廊下側からもキッチンからもウォークスルーで、便利。


ゲストルーム。「友人が泊まりに来るのが楽しみ」と奥様。

所在地:東京都練馬区
竣工:2014年9月
用途・規模・構造:住宅兼用共同住宅・鉄筋コンクリート造・地上4階建
断熱:内断熱/発泡ウレタン吹付け
敷地面積、建築面積:敷地面積 330.50㎡、建築面積 221.31㎡
延床面積、各階面積:延床面積 740.00㎡
設計:株式会社工房 一級建築士事務所