倉庫をリノベーションして快適空間を実現

広いリビングの、キッチンからよく見える場所に、
長いデスクを設けた。大人も子供も一緒に、ここで「仕事」をする。

倉庫の3階をリノベーションした、とはとても思えない居住空間。

農業機械の商社を営むⅠさんは、自宅から4キロほど離れた場所に所有している3階建ての倉庫兼事務所の3階部分を住宅へとリノベーションした。自宅も老朽化してきていたし、かつてほど在庫を抱える必要がなくなり、倉庫のスペースがもったいないということもあった。

しかしそれ以上に、小学校に入学したばかりの娘さんが下校して帰ってきたときに家族が家に居てあげられるように「職住一体」にしたいというのが第一の目的であった。

「近くで子供たちを見守りながら仕事をしたいと考えました。幸い自営業なので、それができる環境もありましたし」と奥様。

キッチン、ダイニング、リビングそして奥が和室。
すべてつながっている。

中心はキッチン。奥の子供部屋の様子も、ここから見える。

ただ、そもそも倉庫を住宅にできるものだろうか、倉庫の壁に大きな窓を開けられるものだろうか、など、いくつかの疑問があった。ネットで「倉庫を住居に」とか「リノベーション」などと検索しながらつぶさに調べたなかに、工房の同じような事例を見つけた。
たまたま住所が近かったこともあり、すぐ連絡、いろいろと質問をぶつけると、的確な答えが返ってきた。ほかにも2社ほど相談したが、話の具体性で工房に決めた。
とくに夏、耐えられないほどの高温になる倉庫3階の断熱をどうするかという話になると、これまで実績を積んできた工房ならではの説得力があった。

「灼熱地獄」だった場所が、明るく快適な居住空間に。

倉庫のときには窓のない壁だった南東側は、光あふれるベランダになった。

倉庫だったころの3階。
奥の窓のない壁は、いまベランダになっている。

倉庫の折半屋根には太陽が容赦なく照りつけるうえ、風通しが悪く、3階には熱がこもった。
猛暑日には50度にもなり、荷物を取りに上がるのをためらうほどだった。

「はたして、この灼熱地獄を住めるようにできるのか」とⅠさんは心配したが、いま、そこは快適な居住空間に生まれ変わっている。

倉庫のもともとの鉄骨躯体を居住空間にうまく溶け込ませる間取にし、すっぽりと断熱材で覆った。引き渡しの2015年9月は、残暑の厳しい初秋だったが、過ごしやすいのに驚いた。

2016年、2度目の夏はまったく問題なく切り抜けた。窓がなかった南東側には、いまはベランダもあり、窓を開けると室内に風が通る。3階が居住スペースになったので、倉庫2階も涼しくなるという副次効果もあった。

おまけに、ベランダからスカイツリーが見えるという思わぬプレゼントもあった。
「倉庫だったことがウソのようでしょう」とⅠさんが笑う。

 奥様のいちばんの要望は「キッチンを中心にして、子供部屋など家全体が見渡せる間取」だったが、これも女性設計士のきめ細かい目配りで、想像以上のものが実現した。

「やりたいことはやりつくしました。工房さんがしょっちゅう顔を出してくれて、すぐに対応してくれたことが嬉しかったですね」と奥様。



[1]玄関脇から奥へ、通り抜けできるパントリー。
[2]奥様のこだわり「洗面台は2台」。家族の朝の動きは極めてスムーズ。
[3]倉庫だったことをうかがわせる異色の玄関。左の柵は2階からの階段。

【スペック】
埼玉県川口市 Ⅰ様邸
2015年8月竣工
鉄骨造
3階床面積(施工範囲)=130.09m2
設計施工=株式会社工房