狭小の変型地に地形どおりに建てた、開放的な木造3階建ての家。


2階キッチンからリビングを見る。南吹き抜けから光が降り注ぐ。
Oさん(左)とIさんと相棒メルセデス、愛称「メル」。子猫の時、Oさんの勤め先でなんと点検中のメルセデスベンツのエンジンルームから発見された。
2人にとって欠かせない家族の一員。
女性の施主に女性の設計担当という組み合わせで、20坪に満たない狭小でありながら光あふれる開放的な間取りを実現させた例を紹介したい。

埼玉県川口市のO邸は、狭小の変型地に建つ木造3階建ての2世帯住宅。Oさんはこの土地を一目で気に入った。カンのようなものだった。不思議とここで生活する自分の姿が想像できた。「この変型の土地に、地形どおりに2世帯住宅を建てたい」パートナーのⅠさんとともに展示場を巡った。いくつかのハウスメーカーに相談もした。
しかし、ハウスメーカーはどこも設計に規制があり、どうしても土地に無駄が出てしまう。そんなとき、工房の営業マンに出会い、相談した。すぐに「土地を見てきました。いい土地ですね。地形どおりに2世帯が建てられますよ」と返事がきた。工房に決めた。初め、「家」に対するOさんのイメージは漠然としたものだった。

そこで、自分とパートナーⅠさんの好み、趣味、体質、ライフスタイルなどを細かいチャートにしてみた。2人のライフスタイルの違いに驚きながらも、そのチャートを工房に渡した。そして数週間後、女性設計担当者からプレゼンテーションがあった。内観パースを見て、Oさんは一目で気に入った。

 

吹き抜けの下から、3階の寝室を見上げる。2人のあとを追って、メルが軽々と階段を駆け上がった。
ブルーの壁紙に赤い椅子が映える。「インテリアまで提案してくれたのが、とてもありがたかった」とOさん。
階段窓には、Oさんのお母様による手づくりのカーテン。

 

南側の吹き抜けと大きな窓が、家中に光を取り込む。

Oさんと設計担当者が目指したのは「狭小だけど、明るい、外に向かって開かれている空間」だった
この土地の前の所有者からは、ここは洗濯物も乾かないよといわれていたが、そんなことはなかった。2階、3階の南窓を大きくとり、さらにそこを吹き抜けにしたことによって、2階のリビング・ダイニングと、3階の寝室には光があふれた。2階南のベランダでは洗濯物が実によく乾く。工夫とアイデア次第で土地の価値は上がる。
「私たちのセンスだけだと、とてもこんな気持ちのいい空間はできなかったと思います」

外車ディーラーに勤め忙しい毎日を送るOさんにとって、家の建築は仕事をしながらの大仕事だった。それでも「まったく不安はありませんでした。私にとっては一生に一度の家づくり。工房のみなさんにとってはそうではないはずなのに、私と同じ感覚でやってくれて、すべての人が労を惜しまずひとつひとつ丁寧にやってくれました」
だから、まったく不信感はなかったという。「そのストレスがなかっただけでも、工房にしてよかった」と、Oさんからありがたい言葉をいただいた。

 


3階から2階リビングを見下ろす。「地形どおり」に建てた斜めの構造がよくわかる。夜はこうやって2人、ワインなどを楽しむ。
まもなくOさんのご両親が引っ越してくる予定の1階2世帯目のスペース。南向きの窓が明るい。
Ⅰさんは吹き抜けの何もない壁の表情が好きだという。3階の窓からは空だけが見えて、ときどき一幅の絵のようになる。
狭小地で建て方用のレッカー車が入らないので2×4工法とした。構造上イレギュラーな部分は2×6で対応した。こちらは玄関側の外観。2世帯だから、もうひとつ北側にも玄関がある。
南側外観。狭小ながら2階のベランダは日当たりがよく、洗濯物もすぐ乾く。
リビングでくつろぐ。吹き抜けの窓から明るい光がふりそそぐ。昼間に帰宅しても照明を点灯しなくても明るい室内が待っている。


所在地:埼玉県川口市
竣工:2013年7月
用途・規模・構造:専用住宅・木造(2×4 一部2×6)・地上3階建
断熱:内断熱/グラスウール
敷地面積、建築面積:敷地面積 57.57㎡、建築面積 36.43㎡
延床面積、各階面積:延床面積 94.91㎡
設計:株式会社工房 一級建築士事務所