将来へと夢をつなげる「現在進行形」の家づくり。

Kさんご夫妻。2階玄関とバルコニーを、パノラマで撮ってみた。
開け放したリビングに日が差し込んで心地いい。

施主のKさんは、ゼネコンにお勤めの建築の専門家。RC(鉄筋コンクリート造)のよさは十分に承知していた。
だから、建てるならRCと決めていた。展示場や家づくりイベントなど、いろいろと足を運んで調べるなかで、工房のモデルハウスを訪ねた。冷房もできる床暖房があるというので、以前から気になっていたのだ。
これは床下のパイプに水を流すという方式のもので、当時、それを設備して実際に稼動させていたのは、工房のモデルハウスだけだった。モデルハウスに着くなり、Kさんは水設備のある地下に直行した。
自由設計で好きなように建てさせてくれること、RC外断熱の施工経験が豊富なこと、そして何よりもこの床暖房の設備が決め手となって、工房で建てることにした。北海道出身のKさんにとっては、工房が北海道出身の会社で「北海道の家の暖かさをわかっている」ということも、いいイメージとなった。
さて、建てるとなると、これもやりたいあれもやりたい、夢はどんどん増えていった。
しかし資金が無限にあるわけではない。どの夢を実現して、どの夢を残すか。Kさんご夫妻のちょっと楽しい家づくりが始まった。

2階バルコニーのグレーチングは、FRP。その下は、将来車庫にする予定のスペース。

外断熱の断熱材の厚さは異例の100mm。その効果はてきめんで、夏、エアコンを設置する前の内覧会に来た断熱材メーカーの担当者が、室内の涼しさに驚いたほど。

 

計画性があるから楽しめる。家づくりは、まだまだ途中。

たとえば「仮にこの家をゴロンと横倒しに転がしたとしても、たぶん躯体はビクともしないはずです」と工房の担当者が豪語するぐらい、この家は頑丈にできている。
サイコロを2つ並べたような単純な構造のRCの躯体は耐久性もある。この躯体が長持ちすれば、ライフサイクルによって内装を変化させていくことができる。
たとえば、いま中学2年と小学校3年のお子さんが少し大きくなったとき、広い子供部屋を間仕切りして2部屋にしたりと、そんなことは簡単にできる。躯体と中身を分けて考える、いわゆるスケルトン&インフィルの発想があれば、いろいろと可能性は広がる。家に潜在能力が生まれる。Kさんは、どの夢もあきらめずに、夢を将来へとつなぐことにしたのだった。
実際に、Kさんは将来の2世帯住宅も視野に入れて、2階のキッチン、バスとは別に、1階にもキッチンとバスのためのスペースをすでに確保してある。家族が増えたときのために、車庫のスペースも余分に確保してある。
たしかに、新築時に無理してすべての夢をかなえなくても、将来にわたってひとつひとつ夢を実現していけばいいのである。これは賢い家づくりの提案かもしれない。ただ、そこにはKさんのような計画性と「まだまだ完成にはほど遠いんですよ(笑〉」と、この先も続く家づくりを楽しむ余裕が必要かもしれないが──。

 


広いLDとその奥の対面式キッチン、その奥の子供部屋。天井の太い梁は、将来できる予定の屋上菜園を支えるため。

螺旋階段を下りて1階リビングへ。そのまま奥はガレージ。
ガレージのクルマの下には、人が潜り込めるメンテナンスピットがある。バイクも2台。まさに男のガレージライフ。

バルコニー下の、将来車庫になる予定のスペース。いまはまだ芝生だけ。

将来、屋上へと続く階段。ただいま未完。未完だけれど、不思議な美しさ。

屋上でKさん(左)と工房の担当者。将来ここに外壁をつくって土を40cm盛って屋上菜園にする計画あり。


所在地:東京都大田区
竣工:2011年7月
用途・規模・構造:専用住宅・鉄筋コンクリート造・地上2階建
断熱:外断熱/エコサーム湿式張り
敷地面積、建築面積:敷地面積 256.23㎡、建築面積 112.97㎡
延床面積、各階面積:延床面積 206.76㎡
設計:株式会社工房 一級建築士事務所