20年後のリフォーム。施主と建築士とのおつきあいはまだまだ続く。
鉄筋コンクリート造4階建てのリフォーム例を紹介したい。
築20年というから、新築時は工房〈建築事業部〉もまだ創業していない。
しかし、もとはといえば現在工房に所属する建築士の設計による建物で、20年経ってさすがの鉄筋コンクリート造(打ち放し)もそろそろくたびれてきたし、新たに断熱のことも考えたいというので、施主のYさんから声がかかった。
4階建てといっても、この建物はちょっと複雑で、複層階(スキップフロア)7層の構造になっている。南北に細長い土地ながら、商業地なので建ぺい率は高い。
それを目いっぱい有効に使って、2世帯が余裕を持って住めるように工夫したら「4階建て7層」という面白い構造になった。「家のなかでお客さんが迷うんです」と奥様が楽しそうに話す。
今回、20年前の躯体はそのまま、防水と防カビの処理をして、新たに「外断熱」を施すというリフォームになった。20年前というと、住宅の「断熱」技術に関しては一般的にいまほど充実していなかった。
それでも、ご両親が住む1階だけはさすがにコンクリートの打ち放しだと寒いだろうというので、もともと内側に断熱が施されていた。
今回、3階より上の階を最新の技術で「外断熱」にすることにより、「これまでがウソみたいに、暖かい!」とYさんが驚くほど、断熱性能は格段にアップした。
[左]打ち放しだった外壁は、3階より上に外断熱を施し、塗装した。下から見上げると、ヨーロッパのアパートメントの雰囲気。
東側に中庭風の小さな空間があり、そのちょっとした工夫によってビルに囲まれた敷地に光が入ってくる。
[右]南北約15m、東西約5mという長方形の敷地。窓が印象的な建物正面は北側道路沿い。
これまでの家のよさを残しながら、これまでよりも快適に住める家に。
鉄筋とコンクリートの膨張係数は同じなので傾いたり歪んだりしにくい、というのが鉄筋コンクリート造の強みである。築20年のこの家の場合も、開口部にほとんど傾きや歪みが見られず、新築時のドアや窓枠やサッシが問題なく使えた。
経年によっていい具合に磨かれたそのドアやサッシが実にいい味を出して、プライスレスな価値を生んでいる。かなり大規模なリフォームにもかかわらず、何もかもをピカピカの新品に入れ替えるのではなく、これまで住んできた家のよさや歴史を残しながら、これまでよりも快適に住める家にするという、これはそんなリフォームの好例といえる。
(1)駐車場にする予定だった1階エントランスは、リフォーム中に急遽変更、美術関係の仕事をされるYさんの打ち合わせルームになった。
(2)生まれ変わった外壁。外断熱を施して、2階窓の上辺あたりから壁が厚くなっているのがわかる。
(3)弱くなったコンクリートは剥がして新しく塗り替え、カビの出た壁は壁紙をきれいに剥がし、防カビ処理をし、壁紙を張り替えた。
【スペック】
東京都豊島区 Y様邸
2013年2月竣工
鉄筋コンクリート造4階建て/2世帯住宅
[主なリフォーム項目]
外断熱施工(外壁+屋上)/外壁ペイント/部屋追加/外壁追加/バス改修/トイレ改装/フローリング張替え/フローリング磨き/壁紙張替え/照明器具取替え など