7社のプランから選ばれた、工房のRC外断熱の家。

リビングからダイニングへの大きな空間は、白で統一されている。日ごろの手入れがよほど行き届いているのだろう、築5年(取材当時)とは思えほど美しい。聞けば、このご主人は、この家になってから趣味が掃除になったのだとか。

施主Ⅰさんは、家づくりをするにあたり、休日ごとにご夫婦で都内の住宅展示場をほとんどすべて回った。もちろん、当時赤羽にあった工房のモデルハウスも訪れ、これは大いに気に入ったが、勢いで7社にプランを依頼して検討することになった。
「模型を7つ並べて一杯やるのが楽しみでした(笑)」とⅠさん。やがて7社が3社に絞られた。大手2社と工房。そこまでの時点でRC(鉄筋コンクリート)にしようというのは決めていた。
ただ、大手のRCは工場でつくってきたパネルを組み立てる方式で、なんとなくニセRCのように思えたし、味もないと感じた。
結局、工房のRC外断熱に決めた。

工房に決めた2つ目のポイントは、工房の財務状態。「当時は社会全体に景気がよくない時期で、小さな工務店だと途中でヘンになるのは怖い。大きな買い物なので、失礼ながら帝国データバンクで調べさせてもらいました。そしたら、工房さんの財務内容はとてもよかったわけです。安心してお願いすることにしました。経営的な余裕がないところではいいものはできないだろうというのもありました」
3つ目のポイントは、原価が見える工房のシステム。「値切りとか、余計なエネルギーを使わないで、おたがいにいいものをつくるというベクトルに向けて知恵を絞れるというのがとてもよかった」とⅠさん。


打ち放しの塀がモダンな外観。以前からこの近くに住んでいて、この土地は、探し始めて1ヵ月ほどで決めた。

玄関脇に植えられた、ご主人お気に入りのオリーブの木。空に向かって気持ちいい。

柔軟な設計思考で、いろんな家のいいところをとり入れて。

外観は幾何学的でモダンなデザイン。内部は虚飾を廃して、四角の箱をつなげたようなシンプルな間取りにした。奥様が要望されたのが、奥行きのあるアイランドキッチン。竣工当時(2009年)、大学生、中学生、小学生だった3人のお子さんの生活時間はバラバラで、朝食はダイニング・テーブルではなく、それぞれがあわただしくアイランドキッチンで摂るのが習慣になっていて、フル活用された。

2階は洋室が5つ。ご夫婦の部屋と、3人のお子さんそれぞれの部屋と、もうひとつ東南のいちばん日当たりのいい部屋、この部屋に、静岡で一人住まいをされていたⅠさんのお母様を竣工と同時に呼び寄せ、入ってもらうことにした。というよりもむしろ、お母様を呼ぶためにこの家を建てたということのようだ。お母様は大いに喜ばれた。素敵な親孝行である。

さて、RC+外断熱というのは最も効率のいい断熱法といわれる。冬は蓄熱暖房器と床暖房でじんわりと柔らかな暖かさが広がるし、夏は軽くエアコンをかけるだけでいい。
しかし、この家の特長はそれだけではない。窓を開ければ、さわやかな風が通り抜ける。優れた断熱性能と風通しのよさという、ともすれば相反するような要素を、この家はうまく両立している。「設計担当の人の頭が柔軟で、いろんな家のいいところをいっぱいとり入れてもらいました」とⅠさん。


吹き抜けから、2階廊下と玄関ホールを見おろす。

玄関ホールの広い空間。階段もスケルトンなので、圧迫感がない。


コンロと換気扇は壁側に持っていったので、大きなアイランド型シンクの周辺は広く余裕がある。


玄関ホールとダイニング、リビングの間仕切りは、微妙に湾曲している。


すっきりと何も置かない庭。植栽のシマトネリコの木は、工房の設計担当と植木屋に同行して決めた。

 

【スペック】
東京都練馬区 Ⅰ様邸
2009年4月竣工/RC外断熱/2階建て/専用住宅
敷地面積=292.83m2(88.58坪)
建築面積=115.78m2(35.02坪)
床面積=1階105.06m2(31.78坪)/2階106.28m2(32.14坪)/PH1階13.95m2(4.21坪)
延床面積=225.29m2(68.13坪)
設計施工=株式会社工房